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最高裁判所第二小法廷 昭和42年(オ)1288号 判決

上告人 森篤

被上告人 国

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人渡部繁太郎の上告理由第一点について。

原審は、下関社会保険出張所が、訴外西島春江に対して有していた昭和三一年二月分から同年五月分までの滞納船員保険料および延滞金合計四万三二一円を徴収するため、健康保険法および旧国税徴収法(明治三〇年法律第二一号)に基づき、昭和三一年一二月一一日本件船舶を差し押え、同月二四日その登記を経由したものであることを当事者間に争いがない事実として確定したうえ、原判決挙示の証拠によつて、訴外西島には右差押当時本件船舶以外に財産のなかつたこと、本件船舶内にも従たる属具以外の物の存在しなかつたことを適法に確定し、本件差押は、右滞納保険料および延滞金と対比すると、超過額の著しい物件を差し押えたいわゆる超過差押ではあるが、当然無効とはいえない旨判断したものであり、この認可判断は、当裁判所も正当として是認するところである。右認定判断の過程に所論の違法は認められず、論旨は採用することができない。

同第二点について。

原判決が、本件船舶の前記差押登記後における上告人の本件船舶の所有権取得は、差押債権者たる被上告人に対する関係においては相対的に無効であるから、上告人は被上告人に対し、右船舶が自己の所有であることを前提として、本件船舶の違法な公売処分により損害をうけたことを主張しえない旨説示したのは正当である。所論は、右と異る独自の見解に立脚して原判決を非難するものであつて、採用することができない。

同第三および第四点について。

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯しえなくはなく、その認定判断の過程には、何ら所論の違法は認められない。所論は、ひつきよう、原審の専権に属する事実認定、証拠の取捨判断を非難するものであつて、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡原昌男 色川幸太郎 村上朝一 小川信雄)

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